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「それでは。プランをご説明させていただきます。」
さっきとは打って変わって真顔で話しかけてくる萩。
だが、抑揚のついた独特のしゃべり方は変化なかった。
「ああ。」
「まず、ターゲットがこちら、有栖川大将です。」
スッと、顔写真を見せてくる。
これくらいは知っているさ、当然。下調べなどすんでいる。
「こいつから、有栖川が一番大切にしていると言われるネックレス、『紅玉葉』を奪いたいと思っております。既にわたくしが有栖川の家の”使用人”として取り入っている状態です。」
「報酬は?」
事前に聞いてはいるが、今一度聞き直しておく。
「この間の爆発手紙でお届けした通り――」
うっ…爆発手紙…思い出したくもないので説明は省略する。
というかネーミングセンスが抜群に悪い。
「わたくしの手元に今現在あります、古来からの貴重品をお渡ししたいなと。もちろんですが、『紅玉葉』よりもずっと価値のあるモノですよ。」
うふふふふと高らかに笑う。
狂人だ。
わざわざ俺に、ターゲットよりも貴重性のある報酬を渡してまでこの詐欺をやり通したいわけ――それは私怨かららしい。
これ以上恐怖を感じたくなかったので深追いはしなかった。
とにかくどうにかして有栖川を苦しめたいだけなので、とりあえず一番大切にしていると言われる『紅玉葉』を奪ってみようと考えたそう。
ちなみに俺に声がかかった理由は、俺が機械系に強く、プログラムでセキュリティシステムをハッキングしてくれると思ったから、とからしい。
「のった。」
手短に全体の計画を説明され、これならばいいだろうと判断した。
いくら天才詐欺師とはいえ、しっかりとしたプランがないもの――リスキーな事案――には手を出したくない。
「ありがとう。それでは、また」
一通り計画の説明を終え、ヤツは帰って行った。
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