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「なんだぁ!!!!」
やけくそになって叫ぶ。
「萩 葉一様 からのようですが…。」
「渡せ!」
”執事”
から手紙をぶんどる。
〈犯友へ
どうやらキミは、私が渡すと言っていたあの貴重品の受け取りを拒否して、代わりに『紅玉葉』を手に入れたみたいだけど、私はそれでまったくかまわない。
だってあれは、有栖川の子どもがむかーし父の日に買ってあげた、ただの安物だから。私はアイツの『一番大切にしてるもの』を奪いたかっただけ。インターネットの情報は全部ウソだよ。私も、実際にあの家で”使用人”として働いて初めて知った。
でも…残念だなぁ。せっかく、報酬にと貴重品を準備していたのに…。まぁ、キミが『紅玉葉』を望むなら、それでいいんだ!
P.S. キミが逃げていった時(物音があった直後かな)、本当はわかっていたんだけど、大事にするのが面倒だったので追いかけなかったよ。もう少し話したかったなー
P.P.S. 渡そうとしてた『古来からの貴重品』の写真を付けておいたよ〜っ♪今から取り替えてほしいって言われてもそれは無理だからね〜っ
キミの親愛なる共犯者 萩葉一〉
手紙に書かれている口調が変わるにつれて、俺の顔の色がどんどん赤く変化していくことが自分でもよくわかった。
「ぬおぉぉぉぉぉ!!! これは!!! 歴史的にも価値のあるものではありませんかっ!! 値段をつけられないレベルの価値ですよ!!!!」
同封されていた、その貴重品とやらの写真を見つけると、さっきまで大人しくしていた鑑定士が、やけに興奮気味で言った。
その言葉を皮切りに、俺は叫んだ。
「くそぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
くそっっ!!!
騙された!!!」
――ビリビリビリビリ
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
手紙を、
破る。
千切る。
引き裂く。
叫ぶ。
喚く。
発狂する。
「よくもやってくれたな!!!!!!!!!!!!」
ー ー ー
広い屋敷にやたらと響いた"主人"の声。
「わざわざ手紙を持参して、反応を見てみようと思ったら…。私は本当のことを言っていたのに、信用しなかったのはキミではないか。それを、騙された、とは悲しいなぁ…。私が騙すのは"ターゲット"だけなのに。」
喚く主人と興奮状態の鑑定士を傍観しながら、
”執事”
は呟いた。
変装用に作った、カツラと顔を剥ぎながら、”執事”はその家を後にした。
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