act.6 拓海・伴走

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「大分仕事を休んじまったからな、職場の人にも沢山迷惑をかけた。これからは更にしっかりしないと」  俺がいつもの様に会いに行くと、北が入院の際に持ってきていた唯一のまともな私物とも言えるノートPCを開いて仕事の準備をしていた。  本当は隆成おじさん達はもっと北を休ませてあげようとしていたのだが、それは北自身が遠慮した。悠里がICUにいる間は自分は何も出来ない、夕方に許された僅かな面会時間に会えるだけだ。  だから北は、余計に自分の仕事をしっかりやろうとしているのだ。こいつはどんな事にも手は抜かない、金を貰っている仕事なら尚更だ。  悠里の誇れる兄貴でいられるようにとのスタンスは、相変わらず変わらないのだろう。 「退院の日は迎えに来る、昼前で良いんだな」 「ああ、ありがとう。色々買いたいものもあるから助かる」  北の私物は入院で持っていたもの以外は全滅だ。悠里にも着替えが必要になったら美音と母ちゃん達に頼む予定。今は全部病院からのレンタルで賄っているらしい。 「お前、金はあるのか?」 「ああ、俺のキャッシュカードは無事だ。悠里のは燃えちまったから銀行に停止を掛けて再発行は本人が元気になってからって言ってある」 「そうか」  それなら大丈夫だろう。  俺は自分が自由に出来る金は全部グリーンカウンティに投資していて、個人的にはいつも貧乏だ。  だがしっかり者の嫁がちゃんと色々やり繰りをしてくれている。  だから火事見舞いを出そうかと持ってきた。これはじいちゃんと親父からも預かっている。 「変な気を回すなよ、現金だったらうちの時任(オヤジ)さんからも来てるぞ。社長と隆成さんからもな、火事見舞いだってさ。俺はそんな見舞いがあるのも知らなかったよ」 「俺もだ、じゃあ受け取れ」  あいつの手を取って強引に我が家三軒分のお見舞いを乗せた。返品不可。 「あ!?おい、出雲!!」 「悠里のために使え」  あっても邪魔になるもんじゃないんだから。悠里の名前を出された北の動きが止まる。 「悠里の好きな可愛いのをいっぱい買ってやれよ。服でもぬいぐるみでも人形でも小物でも、なんでもだ」  北は見舞いの袋を見て、それを両手でしっかりと握った。 「分かった、ありがとう」    その声はちょっとだけ震えていたような気がする。  
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