act.7 龍矢・希望

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   今日は夕方から悠里が勤めていたクリニックに行ってきた。  もう看護師としての復職は到底無理なので、退職の旨は事前にクリニック側に伝えてあった。悠里の私物が残っていると聞いたから取りに行ったのだ。  対応してくれたのはここの年配の看護師長さんで、悠里の今の状態をかいつまんで話したら少し涙ぐんでおられた。  今でも悠里がリハビリを担当していたお年寄りに、悠里の今の状況を聞かれて返事に困る事があるという、寂しいから早く帰ってきて欲しいと皆が言うと。  悠里はちゃんとここにも居場所を見つけていたんだ。それには安心しながらもやはり寂しくなる。  まとめてあった悠里の荷物を受け取って、今日もまた悠里の入院する病院に向かった。  病院に着いてから悠里の私物が入った紙袋を見ると、悠里が好きだったアニメのキャラクターぬいぐるみが入っていた。  あいつ、職場のロッカーにまでこんなのを持ち込んでいたのか。他にもノートやら手帳やらもキャラクターグッズばかりだ、全く悠里らしい。  俺はフッと笑って、そのぬいぐるみを後部座席に並んでいる悠里のコレクションに加えた。本当にこの車はいつの間にか悠里の趣味に乗っ取られていたんだな。俺は誰かに見られたら恥ずかしいから止めろって散々言ってたっけ。  もういいからな悠里、お前が何を乗せても兄ちゃんは怒らないから。  今度お前の好きなでっかいネコバスのぬいぐるみでも乗せておくよ。 d241e4eb-f4fa-42ac-92c2-ce05d17e574e  
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