act.8 拓海・初秋

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   悠里の事件は、その異常性と悪質性から刑事・民事の両方から訴える事になった。  自分たちがキチガイだと主張する作戦を掲げた今井夫婦側は、事ごとく論破されまくり。  当然の事だが、今井夫婦が行ったのは明確な殺意を持った放火による殺人未遂なので。  一応一審の判決が出ても納得する事も無く、事実誤認だと即時控訴。が、どこをどうつついてもヤツらが無罪や執行猶予を勝ち取れる要素はまるでなし。計画的犯行の図式がデカ過ぎる。  最高裁まで争おうが何だろうが、今井(キチガイ)夫婦に勝機などあろう筈が無い。  放火殺人は罪が重い。いくら殺人の方は未遂とはいえ被害者の悠里には重度の障害も残っている。  これでは下手すりゃ極刑だ。必死になる気持ちも分かるが、どこにも逃げ場は無いぞサイコパス夫婦。  死んだ息子を主犯にするのは無理だって。    その間も時任さんとうちの親父は追撃の手を緩めない。  悠里の為に、賠償金を絞るだけ絞りとる為の民事裁判の準備もしっかり行われている。  と言っても今井側にあった財産らしきものは今井健士郎名義の僅かな自宅の土地建物のみ。悠里が使う車椅子代ぐらいにはなるのだろうか。  まぁそちらは親父達に任せておく。いずれにしてもしっかり結果は出してくれるに違いないから。
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