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炎を避けながら屋敷の中を姉を呼びながら進んで行く…
屋敷の奥から争う喧騒が聞こえて来る
どうやら村長の仕事部屋からの様だ
村長の部屋に駆け込むとリーリアを庇う様に抱えた村長とそれを守る様にシルバが戦っている…
戦斧を片手で振り回す程の体躯の男にシルバも応戦するが苦戦を強いられている…
男の振り回す斧をなんとか避けて居るが、一撃でも当たればどうなるか分からない…
助けなきゃ!と飛び込もうとすると
『邪魔をするな』と声が掛かる
「でも…」
『其方が行っても役にたつどころか足手まといなるのが分からぬのか
其方が出来る事などその辺の物でも投げて気をそらせる程度が関の山じゃ』
気をそらせる…、それなら魔獣狩りで何度かやった事がある
直接魔獣と対峙する事が出来ないからいつもそういう役を引き受けて居た、そう思い立ち周りを見渡すと、直ぐ近くに置き時計が落ちて居るのを見付け、拾い上げ男の背中に向け思いきり投げつける
置き時計は男の肩に命中する
突然の衝撃に男がひるんだその隙を見逃さなず、シルバの剣が男の腕を切りつける
腕を斬りつけられてて斧を落とした男にトドメとばかりに首に剣を突き刺す
男は前のめりに倒れると動かなくなった、もう大丈夫だと慌てて村長の下に走る
「リーリア…リーリア」と力なくうな垂れるリーリアに村長が懸命に声を掛けている…
「姉ちゃん…そんな…」
リーリアの背中には大きな斬りつけられた様な後が…それでも懸命に何かを抱え賊に奪われない様にしていたらしい…
燃える屋敷から彼女を連れ出し、亡骸から彼女の守っきて居た物を離させる…
彼女の抱えていたものは1枚の羊皮紙と小さな革袋…
返り血すら付いて居ない程大切に彼女が懐に入れ守って居たようだ…
それは、昨日村長が見せてくれた俺の奴隷契約書と奴隷解放の為の金貨の入った袋だった
「なんで…こんな物を…姉ちゃんはこんな物の為に…」
「こんな物等と言うな…
リーリアが命懸けで守った物だ
これがなければお前は逃亡奴隷になる…そうなればこの村を脱出したとしてもお前に自由は無い…リーリアはそれを分かっていてこれを持ち出そうとしたんだ…」
「だからって姉ちゃんが死んだら意味が無いじゃないか…
こんな物受け取れないよ…」
「コレは私の役目だったのに…リーリアが屋敷に向かうまで気付く事が出来なかった…」
「フォース…コレはリーリアが貴方の為に守った物よ、リーリアの為にも貴方は自由にならなきゃ…」
そう言って抱きしめてくれる村長夫妻の元にシルバが来て村長に
「今回の襲撃どうやら手引きした者がいる様です…」
「そんな者がこの村に居るはずなど…」
「いえ村の者では無く…」
シルバの話によると、手引きしたのは麓の町に住む村から町に移住した者の息子のセイだと言う…
彼はリーリアの従兄弟で婚約者だった男だ…
セイは婿入りを嫌がって居たので、セイにリーリアの婿に入って貰う為の準備金や…見ず知らずの奴隷の子供にポンと大金を出しす様な村だからしこたま貯め込んで居ると、賊をそそのかしたと言う話だった…
「あの金は…町からこんな辺境に来てくれるのだからと皆で出し合って貯めて居た物じゃ無いか…」
「それでセイは今、何をしているんだ…」
「村の外れの社を壊させてから…奴らに口封じに殺されたらしい…」
昔からこの村に害意を持つ余所者は何故か村にたどり着け無かったらしく、村長を継ぐ為の勉強をしていたセイはこの村を亜神様が守って居ると知って居たそうだ…
「なんとバカな真似を…この村に来たくないならそう言ってくれて居たら…」
「俺たちがもっと早く着いて居たら…」そう言うシルバに
「いや、お前達が駆け付けて来なかったら今頃誰一人として生き残れ無かっただろう…
しかし…本当ならば明日来ると言って居たのにどうしてこんなに早く?」
「亜神様が教えてくれた…
すまない…町には寄らず直接村に急いだのだが…」彼の近くにはあの少年の姿が
シルバは少年の方向に目を向けながら申し訳無さそうに俯く
「亜神様が?
そうか…そういえば先代の巫部様はお前の祖母だったな…」
『やっぱりあの人にも亜神様が見えて居るんだ』
「ああ、亜神様が村が危ないと…
心眼があっても男の俺じゃ巫部にはなれないからな…
亜神様が、例え今回守れたとしてもこの村はもう加護を失った、だから村人は村を捨てる様にと……」
「加護が外れる?また社を建てれば…」
「いや…もう新たな加護を掛ける事が出来ないと言ってらっしゃいます…」
そうシルバが伝えるとすまなそうな顔をした少年が顔を逸らす…
「そうか…ならば村人達にも話をせんわけにはいかんな…」村長はそう言うと村人達の所に…夫人はフォースに革袋と羊皮紙を渡すと彼を追いかける…
俺は羊皮紙と革袋…を持ったままリーリアの元から動けないで居た…
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