お似合い結婚

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「おめでとうございます!」  区役所の人にそう微笑んでもらい、私達も満面の笑みで頭を下げた。  6月30日大安。  私達は、ついに婚姻届を提出し正式な夫婦となった。 「お二人ともお似合いですね」  そんな温かい言葉も、今では謙遜せずにお礼を言うことができる。 「ありがとうございます」 「ありがとうございます」  私達はお似合いの夫婦だ。  誰がなんと言ったって。  お似合いになる為に、私達がたくさん歩み寄って、心を通わせてきたのだから。  指輪が煌めく左手を、彼は優しく握ってくれる。 「結婚式楽しみだね」 「お義母さんにいろいろ相談しないと」  目を輝かせてプレゼンしてくれるお義母さんを想像して、胸が一杯になった。 「……ほまれさん」  瑞穂さんが突然神妙な顔つきになり立ち止まった。 「……どうしたの?」 「最後に一つだけ、ずっと黙ってたことがあるんだ」  少し気まずそうな瑞穂さんにドキッとする。  まだ何か不安なことがあるんだろうか。 「……何?」  彼は真っ赤にさせながら言った。 「……本当はさ、“次にお見合いした人と結婚するって決めてた”って噓なんだ」 「そうなの!?」 「ほまれさんだから結婚を申し込んだ」 「なんで……」 「……お店で見かけた時から、いいなって思ってた」 「………………」  今度は私の方が顔が熱くなる。  肝心なことをすぐに伝えないところまで、私達はそっくりだ。  やっぱりお似合いだって思いたい。 「ほまれさん、……ほまれ。結婚できて嬉しい」 「私も」  私達は区役所を出て、我が家に向かった。  今日もあの温かな家で、一緒に食事をし、一緒に眠って、夫婦になっていこう。  気をつけなくちゃいけないのは、もっと思っていることを素直に伝えることかな? 「……瑞穂」 「何?」 「……愛してる」  私の運命の旦那さま。        【おしまい】  
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