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────「結婚まで順調ねー」
今日も閉店後、いつものように近況を聞かれ実家訪問について話すと、智恵さんはにんまりとして言った。
「でも、頑張ってね。義両親との関係が、これから結婚する上で結構大きく関わってくるから」
智恵さんの助言に固唾を飲み込む。
私も薄々はそう感じていた。
純粋に会いたいのはもちろんだけど、気に入ってもらえるかの不安がある。
特にお義母さん。
嫁姑問題ってよく聞くし、相性が重要だ。
……もし上手くいかなかったら、結婚そのものが白紙に……。
「そんなに心配しなくて大丈夫よ。いつもの店長のままでいれば」
「……まったりしすぎですけど」
「最高じゃないすか」
自信をなくす私に、総史郎くんが笑った。
「何があっても動じずにどんと構えるんです。あのマウント女にそうしたように」
「マウント女って……」
総史郎くんは、あのパーティーで出会った奈々さんのことをたまにマウント女と呼ぶ。
そして少しずつだけど、私達の結婚を応援してくれるようになった。
「少しは執筆の役に立った?」
「はい。そりゃもう。順調です」
普段支えられてばかりなので、たまには少しでも役に立てたと思うと嬉しい。
それも、瑞穂さんと二人で。
「……店長、レジ締め終わったら話があります」
「話……?」
いつもに増して真剣な表情の彼に胸騒ぎがする。
「じゃあ、私はお先に失礼します」
ホールの掃除が終わった智恵さんが先に上がると、店内は二人きり。
しんとした空気に緊張感が走った。
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