あなたの隣で

8/13
前へ
/77ページ
次へ
____「店長、新しい人見つかりましたか?」  少し心配そうな総史郎くんに、満面の笑みでVサインをする。 「うん。23歳フリーターの女の子!」 「……良かった。安心しました。引き継ぎは任せてください」  朗らかに笑い合う私達。  あれから総史郎くんとは、変わらずに自然に話せてる。  書籍化や留学について語ってくれる彼は希望に満ち溢れ、清々しい顔つきだ。  新しいアルバイトさんも決まり、これで総史郎くんに心配をかけることもなくなった。  私も店長として、もっとしっかりしないと。  持ち前のまったりした雰囲気は忘れずに。  そう思えたのは、瑞穂さんのおかげだ。 「店長、あとは結婚するだけっすね」 「え!?」 「そうよ!実家訪問いつだっけ?」 「結婚式呼んでくださいねー!」  突然皆からのイジりが始まり、しどろもどろになって豆挽きを始めた。  ギクシャクした動きを笑われ、やっぱり威厳のある店長とは程遠いと感じる。  ……実家訪問。  実はその日は来週に迫っている。  ご両親と良好な関係を築いて、無事結婚まで進めるかがかかっているんだ。 「てんちょ、ファイトー」 「ゴールインはもう目の前よ」  「超めんどい姑だったらやめた方がいいすよ」 「総史郎くーん」  心の中で喝を入れて、来店したお客様の元へ急いだ。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2145人が本棚に入れています
本棚に追加