あなたの隣で

12/13
前へ
/77ページ
次へ
 温かな二人の笑顔は、とても社交辞令とは思えない。  誤解して困惑してしまった浅はかで傲慢な自分を悔いた。  嬉しかった。  まだ会う前から、無条件に私のことを受け入れてくれていたなんて。 「瑞穂が好きになった人なんだもの。素敵な人に決まってるわ」  そしてそれは、息子の瑞穂さんのことを絶対的に信頼して、深く愛しているからなんだってことも。 「ほまれちゃん、母さんはこの通り熱い人間なんです。堪忍してやってください」 「何よ。暑苦しいって言いたいの?」 「そうじゃないよ」  さり気なく隣でお母さんのフォローをするお父さんも素敵な人だ。  風邪で寝込んだ奥さんを、一生懸命看病する人なのだとよくわかった。 「ありがとうございます……」  嬉しい。  涙をこっそり拭いて隣の瑞穂さんにも微笑む。  やっぱり瑞穂さんのご両親だ。  素敵な人達に決まっている。 「ほまれちゃん、これから宜しくね」  そっと手を握ってくれるお母さんに微笑む。  お母さんの手はとても温かかった。 「こちらこそ……宜しくお願いします……」 「……それで、さっきの話の続きだけど」  突然お母さんの顔がパアッと華やいだ。  「挙式の会場をいくつか調べておいたわ!気に入るところあるかしら!?」  ……目が途轍もなくキラキラ輝いている。 「は、はい……」  お母さんはテーブルにたくさんのパンフレットをずらりと並べた。 「新婚旅行のお勧めもリサーチしておいたから!」 「あ、ありがとうございます」  楽しそうに笑うお母さんに、隣のお父さんもタジタジだった。 「私、調べたり段取り決めたりするの大好きなの!困ったことがあったらなんでも言って頂戴!」  あんまりにも嬉しそうで、私まで幸せな気持ちになっていく。 「母さん!やめてくれって言ってるだろ!俺達が決めることだから……」 「いえ!……嬉しいです」 「……ほまれさん?」  唖然とする瑞穂さんに、私も満面の笑みで頷く。 「……嬉しいです。私、のんびりしていて呑気なので。お母さんがサポートしてくださったら助かります」 「本当ー!?嬉しいー!」  考え方を変えたら、お母さんは私達にとって最高に頼もしい存在じゃないか。  まったりした自分にとっては、秘書魂が炸裂したお母さんはとても心強い。 「実は結納の席のレストランも目星はつけてあって!」 「宜しくお願いします!」 「ほまれさん!?」  困惑する瑞穂さんと温かい眼差しのお父さんに見守られながら、夕方までお母さんのプレゼンテーションは続いた。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2147人が本棚に入れています
本棚に追加