あなたの隣で

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「ほまれさん、遅くまで付き合わせてごめん」  帰りの車の中で、瑞穂さんは申し訳なさそうに言った。 「ううん。……楽しかった」  結局夕飯まで御馳走になってしまい、その後は瑞穂さんの幼少期のアルバムを見せてもらったりして過ごした。  いきいきしているお母さんと、それを嬉しそうに見守るお父さんを見ていたら癒やされて、すっかり二人の魅力にはまってしまった私。 「あんな母でびっくりしただろ。困らせてごめん」  私は勢いよく首を振る。 「全然。すごく、……すごく嬉しかった。結婚のこと、喜んでくれて。二人ともすっごく素敵な方だった」  瑞穂さんの話をする時の二人はとても幸せそうで、愛情が深いことが伝わった。  それが自分のことのように嬉しい。 「……ありがとう。うちの親を、受け入れてくれて」  隣で運転しながら微笑む横顔をちらりと見つめ、胸が一杯になる。  ひとつひとつ、二人で新しいことを経験していく度にこの人をもっと好きになる。  それがこの先末永く続いていくのだと思うと、幸せで仕方ない。 「ねえ、瑞穂さん」 「なに?」  今日、思い知ったことがある。  私が結婚するこの人は、ご両親にとってこんなにもかけがえのない人なんだ。  誰かにとって宝ものである人と、私は家族になる。  結婚って、ただ二人が一緒に暮らすだけじゃないんだ。  大切な人の家族とも家族になって、瑞穂さんのこれまでの人生も、これからの人生も、精一杯大切にするってことなんだ。 「私、瑞穂さんを幸せにするよ」 「……ほまれさん?」  赤信号で停車して、彼はキョトンと私を見た。 「幸せにするからね。絶対」  揺るぎなく微笑むと、みるみるうちに瑞穂さんの目が潤んだ。 「……ありがとう。こちらこそ」  瑞穂さんは小さく鼻を啜って、また車を発進させる。 「……ほまれさんと結婚できて良かった」 「私も」 「幸せになろう」 「うん。なろう」  来月、私達は籍を入れる。  家族になるんだ。  今まで以上に深く強く決意して、瑞穂さんの隣にいられることを幸福に思った。
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