能動的結婚か運命の恋か

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「ちょっと。こんなイケメンなんて聞いてない」  向かい席の伊織が小声で囁いて、私は苦笑するしかなかった。  隣の瑞穂さんは、朗らかな様子で伊織に微笑む。  三人でビールで乾杯して、簡単な自己紹介をして。  初めこそ和気藹々とした雰囲気だったが、お酒が入っていくうちに伊織の様子が変化し始めた。 「二人はお見合いしたんだっけ?」 「う、うん」  目がすわっていて怖い。  まるで尋問のような…… 「そうなんです。出会ってすぐに意気投合して、その場で結婚を決めたんだよね?」  嬉しそうに私に向かって微笑む瑞穂さんに冷や汗が噴き出た。 「出会って即、結婚……?」  まずい。伊織は私達を自分のことと重ねてる。 「籍を入れる前にお互いを知る為、同居を始めました。ほまれさん料理上手だし、癒やしオーラが出てるんで毎日幸せです」  ほくほくとして目を細める瑞穂さんを冷めた目で見つめる伊織。  なんとなく、伊織は瑞穂さんのことを疑っているような。 「……家事はほまれ任せ?」 「違う違う!瑞穂さん掃除とか洗濯とかしてくれるし、料理も練習中だから!」 「ふーん……」  ……絶対瑞穂さんのこと誤解してる! 「ご家族とはもうお会いしたんですか?」 「ええ。うちの両親とはこの間会ってくれました。ほまれさん、母とも仲良くしてくれて。すっかりうちのアイドルです」 「お母さんのいいなりってことね」 「違うって!」  嬉しそうな瑞穂さんと、訝しげな伊織の間に挟まれ、神経がすり減る。  伊織は残ったビールを一気に飲み干すと、じっと瑞穂さんを睨みつけた。 「風間さん、お願いがあります」 「はい?」  そして、深々と頭を下げるのだった。 「この結婚、……少し待ってもらえませんか?」 「………………」 「………………」  あ然とする私達。 「……何言って……」 「おかしいと思ったのよ。こんなイケメンが、お見合いして、即結婚なんて。ほまれ、騙されてるって」 「は!?」 「風間さん。ほまれは私の大切な友達なんです。欺くのはやめてください!」 「え…………」  ポカンとする瑞穂さん。  いくら何でも、彼に失礼すぎる話だ。 「ちょっと伊織!やめてよ!瑞穂さんに失礼でしょ!」 「だって私にはわかるんだもん!この人、ほまれのこと利用しようとしてるよ!なんでも言うこと聞いてくれる家政婦にしようとしてる!」 「瑞穂さんはそんな人じゃない!」
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