能動的結婚か運命の恋か

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「誰だって最初はそう思うのよ。ましてこんなイケメン!今は浮かれて周りが見えてないの!」 「そんなことない!私は冷静に結婚を考えてる!」  言い合いになる私達を窘めるように、瑞穂さんが口を開いた。 「心配させてすみません。でも俺、本当にほまれさんのことを大切に思ってるんで」  穏やかで、だけど真剣な眼差しの瑞穂さんにホッとする。  しかし伊織の方は耳を貸そうとしなかった。 「だったら……待ってください。……ほまれのことを本当に大切に思ってくれてるのなら」 「……伊織……?」  伊織は少し気まずそうに私を見つめる。 「……ごめん。言おうかどうか悩んでた。……敦から連絡来たの。こっちに戻って来たって。……ほまれに会いたがってる」  敦。その名前を聞いた途端、一瞬思考が停止した。  長年片思いしていた、振られてからも消化不良が続いていた相手だ。 「……やめてよ、そんな話」  瑞穂さんの前で……。  彼は何か言いたげに私の方を見た。  うまく言葉が出ない。  追い打ちをかけるように伊織が言った。 「私、自分のことで痛いほどわかったの。勢いだけで結婚なんてするもんじゃないって。ほまれも同じ思いしてほしくない」 「伊織……」  彼女の気持ちもわかる。  ……わかるけど。 「敦にずっと会いたがってたじゃん。今会わないともう二度と会えないかもよ?きっと一生後悔する」 「やめて」 「目を覚ましてほまれ。……きっとこの人、何か裏がある」 「……やめてってば!」  立ち上がり、財布からお札を取り出す。 「……後悔なんてしない!」 「ほまれ……」 「行こう、瑞穂さん」  隣の瑞穂さんの手を引き、引き止める伊織の方は振り向かずにお店を後にした。
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