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「ほまれ!また同じクラスか!」
敦には、いつも振り回されてばかりだった。
「花火大会一緒行こ?」
私を一番近くに思ってくれていると感じたら。
「ほまれ、俺彼女できた!」
すぐに遠くに行って。
「やっぱお前といるのが一番楽だな」
また戻ってきたり。
「ねえ、私敦が好きなんだけど」
そんな繰り返しの日々の中、やっと思いが通じたのに、また振り回されて。
「……ごめん。待たせるわけにはいかないから」
別れた時は辛かったけど、……やっと解放されるとも思った。
「……いってらっしゃい。絶対夢叶えてよ!」
それなのにまた、敦に振り回されることになるなんて。
____「……ほまれさん?」
食事中、瑞穂さんの声で我に返った。
「大丈夫?」
「う、うん。ごめん。考え事しちゃって……」
「もしかして」
彼の神妙な顔つきにドキッとする。
……まさか、会ったことがもうバレて……
「……俺の作った味噌汁、まずかった?」
涙目で上目遣いする瑞穂さんに、慌てて首を振った。
「そんなことない!美味しい!美味しいです!」
「良かった……」
目を細め安堵の表情を浮かべる瑞穂さんが可愛くて、ホッと気持ちがほぐれていく。
やっぱり瑞穂さんとの暮らしは心地良い。
振り回されるなんて皆無だし、いつだって優しい時間が流れてる。
「ねえ瑞穂さん、もう今すぐ籍を入れない?」
私の突拍子もない発言に、瑞穂さんは目を丸くさせた。
……早く結婚したい。
敦に振り回される前に、籍を入れて確固たる証を作りたい。
「早く瑞穂さんと結婚したいの」
真剣な顔で見つめると、瑞穂さんの顔は真っ赤になった。
「どうしたの?急に」
「だって幸せだから。早く本当の家族になりたい」
瑞穂さんは笑った。
「そう思ってくれるのは嬉しいし、俺も早く結婚したいけど。
……やっぱり大安にしよう?焦らなくても、役所は逃げないよ」
「うん……」
やっぱり焦りが伝わってしまったのかな。
敦と会ってしまったこと、彼には言えない。
早く取材を終えて、もう二度と会わないようにしないと。
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