能動的結婚か運命の恋か

10/18
前へ
/77ページ
次へ
 不思議だけど、何年もずっと一緒にいた敦とは、どう足掻いても自然と昔のような空気感に戻ってしまう。  もちろん恋愛感情なんて皆無だけど、幼なじみの縁のような繋がりは否めなかった。 「……ほまれさん、どうしたの?」  瑞穂さんへ罪悪感を感じてる。  ベッドの中でも、後ろめたさを感じるようになってしまって。 「ごめん……」  いちゃいちゃしてる時に別のことを考えるなんて最低だ。 「疲れてる?」 「違うの」  もう、正直に言ってしまおうか。 「瑞穂さん、あのね。……実は敦が」  敦の名前を出した途端、みるみるうちに瑞穂さんの表情が曇った。  そして乱暴に私の唇を奪う。 「……今だけはそいつの名前言わないで」  彼はとても怒っているようで、それ以上話を続けられない。  荒々しい手つきに翻弄されながら、彼の腕の中で震えるしかなかった。  ……やっぱり言えない。  ただでさえ妬きもちやきな瑞穂さん。不快な気持ちにさせるに決まってる。  このまま無事に取材が終われば、敦とは縁を切って瑞穂さんに集中できる。  そうやって愚かなことを考えた私は、結局彼に肝心なことを告げられずにいたのだった。  そんな狡い自分に、罰が当たるなんて思わずに。 「瑞穂さん、……しようね、結婚」 「……うん。結婚しよう」  何度も念を押すように囁き合って、激しく瑞穂さんを求めた。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2149人が本棚に入れています
本棚に追加