能動的結婚か運命の恋か

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「ただいま……」  久しぶりに帰った自宅はあまりにも殺風景で、やっと涙が出てきた。  暗いリビングに一人膝を抱えて、静かに涙を拭う。  ……瑞穂さん、すごく傷ついた顔してた。  やましいことはないとは言え、やっぱり敦とは会うべきじゃなかった。  今更後悔しても遅い。  私は、瑞穂さんの信頼を裏切ってしまった。 「う……」  こんなことで全てが白紙になってしまうなんて。  この三ヶ月の営みの全ては、一体なんだったのだろう。 『ほまれさんがつらい時、ずっと隣にいるよ。逃げ出したい時は、どこまでも遠くへ連れて行ける』  そう言ってくれたじゃない。 『瑞穂さんを幸せにするよ』  そう誓ったのに。  何度も何度も、結婚しようと囁き合った約束は、もう無意味なものになってしまったの?  スマートフォンを手に取り、しばらく固まって見つめる。  いくら待っても彼からの連絡はなく、絶望に項垂れた。  ……電話してみようか。  でも、拒否されてしまったら今度こそ立ち直れない。 「はあ…………」  思い知った。  私、自分で思っていたよりも遥かに瑞穂さんのことが好きで、彼に溺れていたのだと。  敦に振られて別れを承諾したあの日より、ずっと胸が痛くて苦しい。  ただお見合いして、結婚の為に愛そうとした人じゃない。  瑞穂さんは、いつの間にか私の人生にとって必要不可欠な人になっていたんだ。
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