能動的結婚か運命の恋か

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「元気出して、てんちょー」  心配そうな顔の結子ちゃん。  プライベートなことで皆にそんな顔をさせてしまうなんて、店長として不甲斐ない。 「大丈夫だよ!」  そう言って強がって笑うのが精一杯だった。  結婚が白紙になってから数日。  再びお店にやって来た敦には、ハッキリとやり直す意志がないことを伝え、私達はついに決別した。  だけどだからと言って瑞穂さんと仲直りできたわけではなく。  瑞穂さん、あれから一度も連絡をくれない。  ここまであっさりと別れが訪れるなんて思いもしなかった。  ……結局、瑞穂さんにとって私は、「結婚相手」でしかなかったのかもしれない。  自分がこの先一生共に過ごす相手に相応しい誰か。  心から信頼できる伴侶を。  その候補者から脱落した私には、もう興味がないのかも。  結婚相手だからこそ私のことを愛してくれたけど、私自身を愛してくれたわけじゃなかった。 「…………っ」  落胆と共に咳が出た。  喉と頭も痛いし、風邪を引いてしまったのかな。  瑞穂さんと一緒じゃないと何を食べても美味しくないから食欲もわかないし、夜も眠れなくて。  そんな日々だから体力が低下してしまったのかもしれない。 「店長、帰った方がいいわよ。顔色悪いし、昨日も咳出てたじゃない」  智恵さんに頭を下げ、お言葉に甘えて先に上がらせてもらうことに。 「すみません。クローズ、お願いできますか」 「任せて!」  皆に迷惑をかけて、本当に情けない。 「……旦那さんに看病してもらったらどうです?」  そんな総史郎くんの冗談も、今は胸を抉った。
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