能動的結婚か運命の恋か

15/18
前へ
/77ページ
次へ
 力なくエプロンを外している時、勢いよく来店のベルが鳴り響いた。  驚いて一斉にドアの方に振り返る私達に姿を見せたのは思ってもみなかった来客者で。 「……奈々さん!?お久しぶりです。すみませんがもう今日は閉店で……」  瑞穂さんの同僚の奈々さんだ。  あのホームパーティーから会っていなかった彼女が、どうして急にお店に。  彼女は私をムッと睨みつけ、威勢の良い声で言った。 「ちょっと!何やってんのよあんた!瑞穂の嫁でしょ!」 「あの……」  何に怒っているのか理解できずに立ち尽くす私に、奈々さんは苛立ちを隠さずに続けた。 「瑞穂、ずっと体調悪いのに無理して会社来てんのよ!なんで止めないの!なんでちゃんと看てあげないのよ!それでもあんた奥さんなの!?」 「……瑞穂さん、体調悪いんですか?」  今は一緒に住んでいないことも知らないだろう彼女がもっと怒りを噴火させる。 「何で知らないのよ!看病したいんじゃなかったの!?」 「奈々さん……」 「あんなに惚気てたじゃない!風邪引いたら看病したいって!だから私諦めてやったのに」  瑞穂さんの為に怒ってくれる、それにわざわざ私を叱る為にお店に来てくれた奈々さんに、心から感謝する。 「奈々さん……ありがとうございます」  居ても立ってもいられない。 「てんちょ、気をつけて」 「二人であったかいものでも食べなさいね」  自分の体調不良も忘れるほど必死に、慌てて瑞穂さんのマンションへ急いだ。  
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2149人が本棚に入れています
本棚に追加