能動的結婚か運命の恋か

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 数日ぶりに戻った瑞穂さんのマンション。  まだ離れてからそんなに経っていないのに、懐かしさに涙腺が緩んだ。  呼び鈴を何度か押しても、瑞穂さんは出てこない。  もしかしてまだ帰ってない?  それとも、部屋で倒れているんじゃ。  嫌な胸騒ぎがして、悪いと思いつつも合い鍵でドアを開ける。 「……瑞穂さん……?」  中は真っ暗で、瑞穂さんの姿はなかった。  ……まだ仕事中?  体調が悪いというのに……。  とりあえず買ってきたスポーツドリンクや食材を冷蔵庫にしまい、怠い身体を奮い立たせてお粥を作り始める。  頭痛は酷くなる一方で、汗も止まらない。  どうやら発熱してしまったみたい。  こんなんじゃ、看病するどころか風邪をうつしてしまわないだろうか。  ……やっぱりこんなこと、迷惑?  冷たい眼差しの彼を思い出し、直ぐさま頭を振って嫌な想像を打ち消した。  一目会いたい。  身体が心配で、他のことは何も考えられない。  耐えきれずにスマートフォンを手に取る。  勇気を出して瑞穂さんに電話をかけるも、ちょうど話し中だった。  ……忙しいのかな。  やっぱりまだ会社?  しつこいと思いつつも心配で、もう一度だけ、もう一度だけ、と何度かけても話し中。 「………………瑞穂さん……」  こんな些細なことにも打ちひしがれる。  やっぱり私達は、上手くいかない運命なのかな。  ……瑞穂さんはもう私のこと。  目を瞑り項垂れる私の耳元に震えるスマートフォン。  驚いてガバッと起き上がり画面を見ると、瑞穂さんの名前が浮かんでいて息を飲んだ。 「瑞穂さん!今どこ!?」 『ほまれさん!今どこ!?』  …………………… 「え!?」 『え!?』  電話越しの声はいつもの瑞穂さんの優しいトーンで、それだけで涙が滲んだ。
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