能動的結婚か運命の恋か

17/18
前へ
/77ページ
次へ
『……今、ほまれさんちの前にいる』 「なんで!?」  思ってもみなかった事実に言葉を失っていると、彼は少し言い辛そうにして答えた。 『昨日、総史郎くんが家に来て、ほまれさん体調悪そうだって教えてくれて』 「総史郎くんが……?」  だからさっき、わざとあんなこと言ったの?  最後まで彼の優しさに助けられていたことを知り、溢れる涙を止められなかった。 『俺、心配で仕方なくて……』 「……私もだよ!奈々さんに、瑞穂さん体調悪いって聞いて。居ても立ってもいられなくて、……今瑞穂さんの家にいる」 『………………』 「………………」  その()が愛しくて、私達はクスッと笑った。 『待ってて。……今すぐ帰るから』 「うん……」  泣きながら何度も頷いて。  再び瑞穂さんの家に、……我が家に居られることの喜びに、じんと胸が熱くなる。  お粥が完成した頃、玄関から控え目な「ただいま」の声が。  声にならない声でおかえりと返す。  この言葉が、こんなに尊いものになるなんて思いもしなかった。 「大丈夫?ほまれさん」 「大丈夫?瑞穂さん」  二人とも汗だくで、声も弱々しくて。  それでももう一度言葉を交わせたことの嬉しさに、涙を浮かべて微笑み合う。  瑞穂さんの手には、たくさんの飲み物や食材が入ったエコバッグ。  そのラインナップは私が持ってきたものとことごとく一緒だった。 「ほまれさん、熱あるんじゃない?」 「そっちこそ……」  彼の温かい手が私の額に触れ、幸福な熱に涙を溜めた目を閉じる。 「とりあえず……一緒に寝ようか」 「うん……」  また笑い合って、手を繋いで。  それ以上言葉を交わさなくても、全てが通じ合うようだった。 「お粥作った。食べられる?」 「えー。嬉しい。食べる」  まるで、長年ずっと暮らしていた二人、……夫婦みたいだ。  仲違いしたって、謝る前に元の関係に自然と戻っていく。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2148人が本棚に入れています
本棚に追加