能動的結婚か運命の恋か

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 向かい合ってお粥を食べて、額に冷却シートを張り合って。  私達は発熱と頭痛にうなされながらも、二人並んで同じベッドに横たわった。 「大丈夫……?」 「うん。……瑞穂さんは?」 「大丈夫」  恐る恐る手を近づけると、すぐにぎゅっと握ってくれる。  ……本当だった。  彼は本当に、私の看病をしてくれるんだ。  どんなことがあっても。 「……瑞穂さん、約束破ってごめんね」  勇気を出してそう切り出すと、瑞穂さんは困ったように苦笑した。 「……俺の方こそ。自分勝手だった」  私達は手を繋いだまま、仰向けになって天井を眺める。  浅い呼吸が二人分響いて、なんだかおかしかった。 「……俺、ほまれさんを試してしまった」 「……試す?」 「そう。……いや、試されようとした。俺が本当にほまれさんの結婚相手でいいのかって」 「瑞穂さん……」  瑞穂さんはずっと天井を見上げたまま、頼りなさげに呟く。 「お見合いしてから、結構強引に結婚迫っちゃってたし。今更怖くなって。ほまれさんを巻き込んでないか。……本当は、あいつの方がほまれさんの運命の相手で、俺は違うのかなって」  その言葉を聞いた瞬間、途轍もない悔しさが押し寄せた。  そんなふうに思わせてしまった不甲斐ない自分にと、一瞬でも私を疑った瑞穂さんにだ。 「……そんなわけないじゃない」  勢いよく瑞穂さんにしがみつき抱き締める。  嗚咽で震えて、上手く声が出なかった。 「私の運命の人は、……瑞穂さんだよ。誰がなんて言おうと。……神様が違うって言ったって。私は力尽くでも運命にしてみせる」 ____『自分で運命の出会いにするの』  お見合いする前に智恵さんに言われた、そんな言葉を思い出していた。  私は何があってもこの出会いを運命にしたい。  智恵さんのように、年をとっても一緒に映画を観に行きたいと思える旦那さんは、瑞穂さんしかいないから。 「……瑞穂さんは違うの?私は運命の人じゃない?」  瑞穂さんはぎゅっと抱き締め返して、私を真っ直ぐに見つめた。 「……運命の人だよ」  私達は泣きながらくしゃくしゃになって笑って、そっと唇を重ねた。 「風邪、うつしちゃうかな?」 「どっちもどっちでしょ」  朦朧とする中、噛みしめるようにしてお互いの温もりを味わう。 「……結婚してください」 「……結婚してください」  何度だってそう懇願して、受け入れて、夫婦になっていこう。  いつまでも不器用なくらいお互いを思いやって、時にはすれ違いながらも。
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