第二章 盲目の聖女

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「もう一つ問題となっているのはレオナルド王子による暴力行為であったのか、否かという点です。これについては?」 「暴力的……ではなかったと思います。……優しかったです」  流石に恥ずかしくなったのか、ユリアナの声は小さくなる。ざわついていた法廷も水を打ったように静かになった。レオナルドは座りながらも両方の拳を強く握りしめた。 「レオナルド王子は、護衛騎士に扮していたと聞いています。あなたの前では声をださなかったとも」 「はい、彼の声は聴いていません」 「では、あなたは文句も言えず、すぐにいなくなる臨時の者であったから、頼んだのですか?」 「違います。彼は……、護衛騎士はレオナルド殿下と私はわかっていました」  ここで彼を擁護しなければ、レオナルドを守ることはできない。ユリアナは隠そうとしていた想いを明らかにしてでも、彼のことを守りたかった。聖女の力を失くした方法を明かすことは、自分が純潔を失ったことを知らせることになる。どれだけ恥ずかしく思ったとしても、彼に罪を負わせたくなかった。
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