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見えないために声で判断するしかないけれど、審問会の場で偽証することはできない。ユリアナも彼のことを愛していると伝えたのは、隠しきれない想いだったからだ。表明することで彼を守れると思ったからだ。でも、レオナルドが自分のことを愛しているなんて、思ってもいなかった。
——信じられない、先見では私とは違う女性を妻としていたのに……!
それとも先見が実現するのはずいぶんと先になるのか。いや、そんな感じはなかったから、レオナルドの結婚はそれほど遠くない未来のはずだ。だとしたら、なぜ自分のことを……。
嬉しさよりも戸惑いの方が大きい。混乱する心の内側を隠すようにユリアナは白いベールを被りなおしながら、鈴を握る。
副議長はきりりとした表情で口を固く結んでいた。判決を出す陪審員の何名もが、感極まった様子でユリアナ達を見ている。レオナルドはユリアナを見つめるけれど、駆け寄ることもできずもどかしそうにしていた。
「これにて、審問会を閉会する。判決は一刻後に申し伝える。以上」
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