第二章 盲目の聖女

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 彼女は何が言いたいのだろう。これまで、父からは神殿には近づいてはいけないと言われて続けて来た。一度でも神殿に入れば、もう二度と外に出ることは叶わないとまで聞いていた。  それに審問会で、シャレールはレオナルドのことを訴えた張本人だ。主訴ではレオナルドのことを『粗野で横暴な王子』とまで言っていた。そんな人物と、あまり話をしたいとは思えない。 「私を恨んでいるだろう。先ほどの審問会の話では、そなたは第二王子のことをずいぶんと大切に思っているようであったな」 「……」  ユリアナは何と答えていいのか、わからなかった。神殿のことについて、知らないことが多すぎる。秘匿の聖女のスカラは彼女のことを嫌っていたが、今自分に静かに語り掛けている人物について、ユリアナが知っていることは少ない。  人伝えに聞いたことだけで判断することは避けたかった。自分に話しかけてくる人を、むやみに嫌うことのできるユリアナではなかった。 「先見をしたようであったな。それも王子の未来を」 「……はい」 「これで三度目であろう。そなたは余程、王子のことが好きなようだな」
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