第二章 盲目の聖女

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「神殿長様。なぜ、そう思われるのですか? 先見と感情と何か関係があるのでしょうか」  言葉の端々に、彼女が先見の力について何かを知っていることが伺われた。聖女の力は自分でもわからないことが多い。教えて欲しいと、ユリアナは静かに問いかけた。  すると目の前に座っているシャレールは、まるで懐かしい思い出を語るような口調で話し始めた。 「私の恩人がそうだった。そなたも話には聞いておろう、先代の先見の聖女だ。そなたの父親の、祖叔母になるか。彼女も好いた相手のことはよく先見しておった」 「その方を知ってらっしゃるのですか?」 「あぁ。私にとって姉のような存在であった。本当に優しくて、美しかった」  シャレードはうっとりとしたような声で、聖女の話をユリアナに聞かせ始めた。まだシャレードが幼い頃の話だった。家族と引き離され、泣いてばかりいた彼女を慰め、支えてくれたのが先代の先見の聖女であったという。 「それを……、王家が利用して彼女を殺したのだ。あれほど、心の美しい人を」 「あの、それはどういうことですか?」
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