第二章 盲目の聖女

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 いくらユリアナが叫んだとしても、それ以上言葉が通じなかった。シャレールは側近たちを呼ぶと、ユリアナは見知らぬ男性たちに両脇を抱えられるようにして立ち上がらせられた。 「神殿長様! こんなことは間違っています! 私はもう、聖女ではありません!」  喉を枯らすように叫んでも返答は聞こえない。あまりにも騒ぐユリアナを黙らせるため、布に染みこんだ匂いを嗅がせられる。すると頭がぐるりと回ったかと思うと、ユリアナは急に意識を失いぐったりとした。  ◇ ◇ ◇  時は少し|遡(さかのぼ)る。  証言が終わり判決が言い渡されるまでの時間、レオナルドは王族用に用意された控室に行くと、落ち着かない様子で部屋の中をぐるぐると歩いた。  ——ユリアナッ、あんなにも青白い顔をして、大丈夫なのか? 大勢の前に立ち、告白までして今頃困っていないだろうか。あぁ、すぐ傍にいって俺が支えたい。  まさか大法廷で愛を告げることになるとは思いもしなかった。エドワードに誘導された気がしないでもないが、ユリアナの告白と合わさると陪審員たちの印象は良くなったはずだ。
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