第二章 盲目の聖女

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 あの後、執事に聞いたところ、やはり以前いた侍女の先見した未来を変えたと思われる時刻に、ユリアナの髪の色が変わっていたという。だが、ユリアナがこれ以上落ち込むことのないように、アーメント侯爵がかん口令を敷いたのだった。 「でも、なんだか間抜けだわ。ずっと自分の髪の色を知らなかったなんて。その為に私は誤解して苦しんでいたのに……」 「そうは言っても、誤解していなければユリアナは俺に『抱いて』なんて言えなかったんじゃないのか?」 「まぁ、そう言われてみればそうかもしれないけど」  あの夜が最後だと思っていたからこそ、勇気を振り絞って言うことができた。あの夜があったから、今の幸せを得ることができた。戸惑いも、悩みも、喜びも、全てのことが今の幸せに繋がっているように思えてくる。 「それに、自分の髪は黒いと思い込んでいると、いくらヒントがあってもわからないものだよ。はっきり伝えてくれた兄の子どもたちに、感謝しないといけないな」 「ええ、今度何か、木でおもちゃでも作りましょうよ。貴方なら得意でしょ?」 「ああ、そうだな。木彫りの熊でも贈ろうか」
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