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第一章 沈黙の護衛騎士
深々と雪の降り積もるうっそうとした森の奥に、こぢんまりとした屋敷が建っている。景色に溶け込むように白い外壁をした建物には、ひとりの聖女が住んでいた。
——先見の聖女。
未来を詠むことのできる聖なる力を持ちながらも、存在は隠され人々の前に出ることはない。
ただ、ひっそりと息をひそめるようにして生きていた。
「お嬢さま。先日お伝えしました臨時の護衛騎士が到着しました」
「そう、ありがとう」
ユリアナは顔にかかる長い髪をはらいながら顎を上げると、執事と共にもうひとりの男が部屋に入る足音を聞いた。窓から入る明るい光が顔に当たっている。男はユリアナの姿を見て、わずかに息を詰めたようだ。
「名はレームと言いますが、この者は声を出すことができません」
「まぁ」
「ですが腕は立つとの話ですから、ご安心ください。普段は呼び鈴を持たせますので、返事をする時はひとつ鳴らすようにします」
チリン、と可愛らしい鈴の音が聞こえる。男が鳴らしたのだろう、心地よい音がする。
「わかりました。では、否という時はふたつ鳴らしてください」
再びチリン、と鈴が鳴る。
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