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狭山さんは大山さんをにらみつけ、
「ああそうか、『オオカミ少年』のつもりだな? いつもうそをついているから、肝心なときに信じてもらえない。そう言いたいんだろう。そんなつまらんことが言いたいために、こんな茶番をうっているのか」
唾を飛ばして激昂する。
「馬鹿にするな! さっさと眼鏡を返せ。さもないと……」
「いや、そうじゃないよ。狭山さん、あんた普段眼鏡なんかかけておらんじゃろう」
ぴたり、と狭山さんの動きが止まる。大山さんは訊ねる。
「いつ眼鏡なんか買ったんじゃ? 最近か?」
狭山さんは言い返そうとして口を開く。しかし言葉が出てこない。
「どうしたんじゃ? 狭山さん。眼鏡をなくしたんなら、みんなで探すよ」
だが狭山さんは、ただ青い顔をして、突っ立っているだけだ。
しばらくして、狭山さんは何も言わず、ふらふらとした足取りでリビングから去っていった。
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