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年ごろは六十半ば。ほとんど禿頭で、小さな白銀色の髷をちんまりと頭頂にのせた牛島屋重右衛門は仕立てのいいさび色の単衣に絽の夏羽織を身にまとっていた。帯には黒漆塗りの脇差と煙草入れをはさんでいる。丁寧な物腰と静かな口ぶりには大百姓の貫禄よりも、むしろ苦労人の地道さがにじんでいた。
「彦次郎さんの口利きで、仕事の依頼を請けてくれる人を探してもらっただに、まさかオメのよな若けぇおなごとは」
お潤を前にして目を見張り、息を飲んでいる。戸惑っていた。こんな若い娘に果たして、自分が依頼する仕事ができるのかという疑念と不安があるのだろう。それとは別に、お潤の容貌に素直な感嘆が禁じ得ないらしかった。
「こったにきれぇな娘ごに、汚れ仕事なんぞさせては、なんともおやげねな……」
おやげね、とは気の毒、かわいそうという意味である。
「お気遣いありがとうございます。でも、ご安心ください」
目を細めて優しい笑顔を浮かべているお潤のあとを引き取って、開け放った広縁を背にして座っている彦次郎が言葉を添えた。
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