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「また死んだ」
「また死んだ」
またも暗黒の空間で跪く私を双子は愉快そうに笑う。私にとって3度目の死。避けることが不可能な死に対する恐怖とその度に私の身体で奏でられる鈍い激痛を伴った不協和音。それら全てが私に絶望を植え付ける。
「ねぇあなた、運命に抗ってみない?」
異形の女の言葉が私を縛り付ける。そう、私は苦労して留学への道を掴んだ。彼女の言う通り、死への運命に抗ったその先に夢の生活を送ることができるならば……。
「オエェ……」
私は再び嘔吐し、それを見た双子は鼻をつまんで「汚い」と交互に言い合う。ゼェゼェと息の上がる胸を押さえて気持ちを落ち着かせながら目を閉じる。
––––もっと、もっと前の時間に。せめて横断歩道を渡り始める前に
木製扉が現れて例のごとくノック音が鳴る。私は震える身体を奮い立たせて扉に向かい、軋む音を響かせながらゆっくりと開扉した。
2023年5月13日 (土) 午後6時17分 再び私の肉体が宙を舞う。
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