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けれど、レナートとしても一端の職人だという自恃があり、王室に嫁ぐ令嬢に作るドレスだからこそ、彼女に似合う相応しいものを、と思う気持ちはとても強い。
そんな時に、向こうからのご指名で街の案内をしてほしいという誘いだ。どんなにスケジュールが詰まってようが、王室からの依頼は最優先(心意気としては、常にキュカを最優先したいところだけど)。これに乗らない訳がない。
結果的に、やはり午後の予定をクローネの買い物に付き合った事は大いなるプラスに働いた。何せレナートとクローネは歳の差がある分、まだ騎士見習いとして登城した事があった頃ですら、第二王子の婚約者と接する機会などほぼなかったので。
アルフレートの婚約者は、間近で見れば全体的に華奢で可憐で、それでいながら口元の小さな黒子や濡れたような琥珀の瞳、少し日に焼けた肌が色白の肌にはないエキゾチックな色香を醸し出し、少女特有の清潔感と甘い匂いがほんのり香る。キュカにも言える事だが、この年頃の女の子は成長が早い。
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