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その中の一人、騎士団長の次男マティアスは、伯爵令嬢キュカの幼馴染である。
元々親同士の仲が良く、その縁で幼い頃からマティアスとは姉弟のように共に過ごした。年齢も同じだし家格も伯爵家同士釣り合っているからと、正式な婚約はまだ結んでいないが、親の口約束で何となく婚約関係にあるようなないような、というあやふやな関係性。
王太子を筆頭に、宰相の息子も、外交長官の息子も、魔術師長の息子も、証拠らしい証拠もなしに、リリアンの証言のみでロザンナを悪と決め付ける。
けれど、その中の一人、マティアスだけは無言で居る。キュカには――キュカだけは、その理由が判っていた。
何も言わずに佇むマティアスを不思議に思ったのか、訝しげにアレクサンダーが「お前も何か言う事はないのか」とマティアスを振り向く。
「……では、一つだけ。アレク殿下に確認したい事があります」
「? 何だ」
「先ほど、ロザンナ嬢と婚約を解消すると仰っていましたが、そのお言葉に二言は」
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