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「ある訳ないだろう! 私にはリリアンが居るんだ。大体、私はロザンナを好きだと思った事など、一度もないのだからな。いつも端然として、表情も崩さず、鉄のような心で、気の休まる時がない。息が詰まりそうで、ずっと窮屈だったんだ!」
(なんて酷い事を仰るの。たとえ恋心が芽生えなかったとしても、今まで長年寄り添うように関係を築いて来た婚約者を公衆の面前で辱めるなんて……)
リリアンに夢中になってからの王太子は見るに堪えない。尊敬すべき面も多々あっただけに、今のアレクサンダーにはただただガッカリする。
「では…。一言、ロザンナ嬢に告げたき事が御座います」
「あぁ。存分に言ってやれ。リリアンは随分と悲しい思いをしたのだからな」
「そ、そんな……、アレク様、私がアレク様と親しくなってしまったのが悪いのです。ロザンナ様が私を目障りに思うのは、当然の事で…」
「君の謙虚なところは好ましいと思うが、悪行には罰が必要なんだよ」
アレクサンダーとリリアンのやり取りを無視し、ス、と体躯に似合わず軽い身のこなしでマティアスは前に出る。
(…あぁ、とうとう言うのね。マティ、頑張って)
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