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 テジミアは海を隔ててはいるものの、リュジからは船で片道一日半という近さで、周辺各国に轟く大国である。その頂には、もうすぐ五十になろうかという自分の父よりも若い三十路の君主が座り、王太子の頃から眉目秀麗で英邁と評判だ。  政略結婚の相手――テジミア王国のグラン将軍は現国王の従弟であり、公爵位を持つ上流貴族で、周辺国家の一つに過ぎないリュジ帝国にも伝わるほどの将軍でもある。  既に臣籍降下しているとはいえ、血筋で言えばグランは王族と呼んで差し支えないほど王家に近しい。  そんな彼が小国の第七皇女という微妙なミゼルカを妻として娶る事からして、自分の縁談とは思えないくらいの好条件だが、元々ミゼルカは結婚相手が誰であっても構わなかった。  相手のグラン将軍やその主であるテジミア王に実際はどう思われようとも、自分が嫁ぐ事で少しでもテジミアとの和平が保たれるならば、安いものだ。  それに結婚相手のグランは大変見目麗しい男と聞く。そんな華々しい偉丈夫にこんな地味な女を正妻として貰わせるなんて、却って申し訳ないくらいだった。  政略的な意図が絡む以上は、仕方ない事だが。
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