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皇帝の愛妾は、彼が気に入れば身分に関係ないとは言え、実質は殆どが良家の貴族令嬢。そんな中でたった一人、娼館出身の平民女が入った。後宮にたくさんの美女を囲いながら、好色な皇帝は時折身分を隠して娼館に行くのが息抜きの一つ。
皇后は無理でも、皇子を産めば、或いは寵愛を受ける事に成功すれば、実家に力がつく。――そう考えて、令嬢達は若い求婚者を袖にしてまでも父帝の愛人になりたがる。そうすると必然、後宮には似通った女が多くなり易い。偶には毛色の違う女を抱きたいと思っても仕方ない。
そんな風に、ある夜数回相手をして気に入られ、後に召し抱えられたのが、ミゼルカの母だった。
それなりに教育の行き届いた高位の娼館といえども所詮は娼婦、そんな身分の女が後宮に入ったのは過去の歴を紐解いても殆ど前例がないばかりか、後宮入りした時点で既に彼女には妊娠の兆しがあった。
娼婦という職業から、本当に皇帝の子なのかと噂されただろうし、ミゼルカが産まれてからもその疑惑は晴れず、本当に皇族の尊き血が流れているのかと疑われるような美人でもない姫など、誰が好き好んで娶るだろう。
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