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「私は、武器」
私が生まれた時から、すでにそこは危険の蔓延る地であった。
逃れようとしても、移動手段は足のみで、地形や土地や国名について知識を授けてくれるような人などいなかったので、右へ行けば良いのか左へ行けば良いのかすらわからない。
親であった女性は、敵であるのか味方であるのかもわからない兵士によって私を孕んだまだ若い少女で、せめて腹の中にいる間に殺されなかったことだけでも感謝していた。
狭い隙間だらけの小屋で、血まみれの私を産み落とすと、まだ万全ではないであろう身体を引きずるようにして出て行ってしまった。
顔も覚えていないけれど、胸元に金の糸で繊細な刺繍を施された服を着ていたことだけは記憶にあった。
彼女は、そうだ、そう、そうに違いない。
産声を上げもしない赤子に、死産だったと思い、だから捨て置いて去っただけかもしれない。
そう思うことで、悲しみや孤独感を感じないように生きていた。
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