「私は、武器」7

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「私は、武器」7

 それから、今や青年となった少年、彼に問いかけてみたいことが出来た。  たった今だ。  けれど、力の抜けて行く体は横に倒れ、開いた目を閉じることさえ出来ぬほどに息苦しい。  痛い。焼けるように、傷口が。  燃えている。命が。息絶える。  その寸前に。どうか。どうか。  聞きたいの。  ううん。  最後に、聞いて、欲しいの。  伝えたかったの。  どうか、あの日のように、微笑んで頷いて。  この小屋の床は、あえて土のままにしてあった。  少年が指で書く文字で、会話をする為だ。  ぶるぶると震える人差し指を地面に立てて、私は最後に質問を残した。 『もう、ここをでて、あなたのそばで、ぶきをかまえて、ともにたたかってもいいですか?』  私が本当に姫様だったのならば。  あなたに守られ続け、戦う為の道具をこさえるばかりではなくて。  仲間である者たちと共に立ち上がり、戦場であなたの支えとなりたかった。  私も、あなたを守る武器に、なりとうございました。
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