本編

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 顔が整ってて、成績優秀で、運動もできる。 それでいて性格もいい。  そんな高根の花のような人に恋した人も多いんじゃないかい? 僕は、そんな彼女(つぼみさん)に惚れたんだ。 …小学生のころだったかな?  ー人間って欲深いから高根の花に憧れて、恋するようにできているのかもしれない。  今見返せばそう思うほど、小学生の僕は本当につぼみさんが好きだった。 同い年だった。  思い切って告白もしてみた。 けど、やっぱり、振られた。 僕はつぼみさんにとって何の取り柄もないモブだったんだろうね。  僕はこれがあったから、無意識に恋しないようにしてたんだろう。 26歳になったが、あれから恋は一回もしていない。  僕は何の取り柄もない、サラリーマンになっていた。 漫画カフェで、漫画を読みながら飲み物を飲み、 ーふと思った。 『つぼみさんは今頃どうしているんだろう』 と。  僕は不思議に思った。 今まで、つぼみさんの事をどうしているのかとか、好きだったなぁ~。とか振り返ったことは、恋が吹っ切れた時以降、一切ないからだ。  そして、偶然か、必然か、つぼみさんが漫画カフェに入ってきたのだ。 僕は凄くびっくりした。 つぼみさんのことを考えたすぐに、つぼみさんを見かけたからだ。  なぜつぼみさん本人だと分かったのかというと、 僕の事を見た瞬間、そっぽを向き、やっぱり近づいてきて、つぼみさんが本人であるということを伝えたからだ。 彼女の言った言葉はこうだ。 「あ、あの…。橋本君だよ、ね? わ、私桜井。 君が、小学生に告った、桜井 つぼみ。覚えてる?」 なんとも気まずいといった雰囲気だった。  僕は 「…う、うん。そうだよ。僕、橋本。 というか、よく僕だと分かったね? 僕が小学生の頃に告ったの、まだ覚えてるんだ。凄いね…。」 と緊張しつつも言った。 「‥実は橋本君のこと、大学で見かけたんだよね。 でも、気まずくてそのときは話しかけれなかった。」 と意外なことをつぼみさんは言った。 それがきっかけだったか知らないが、僕たちは1時間くらい話した。  話しやすかったし、気が合ったからだ。  そして、彼女の言葉からでてきたのだ。 多分もう二度とない、初恋が実る最後のチャンスの言葉が。 「私今、大手企業の社長秘書やっているんだけど、その社長がスケベなおっさんなんだよね。  隙あらばお尻触ってこようとするし…。でも社長に強く言えばクビになるかもしれないから、強く言えなくって…。  よかったら、橋本さん。 私の彼氏役になって欲しいんだけど…。」 と言い、つぼみさんはいたずらっぽく笑った。  そのとき、小学生のころに縁結びの神様に、『初恋が実りますように』と願ったことを思い出した。 ーその縁結びの神様の見た目が、6歳くらいで、中身は老人っぽい神様。 年上のお姉さんが好きだったけど、6歳で振られた。 それで、自分の初恋が実らなかったかわりに、恋を実らしてくれるという神様。 僕は、近い年で振られたという親近感から、お祈りしたんだ。  もしかしたら、この偶然も、縁結びの神様が作ったきっかけだったりして。 そう思いながら、話を受けた。  完全に吹っ切れたと思ったのに、まだ未練はあったようだ。 ー僕が頑張ったら初恋が実るかもしれない。  そんな期待を持ちながら、これから僕は日々を過ごすことになるだろう。
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