十年後に会いましょう

10/10
前へ
/10ページ
次へ
「……」  浮遊感がなくなる。目を開くと、辺りの白いもやがとれ、廊下が広がっていた。帰れた? 「それにしても、何だったんだろう……」  カツ、カツ。  音が、聞こえる。もしかして。 「……坂下くん?」  俺はその声に振り返る。 「保積、先輩……」 「坂下くん、老けたねえ……」  俺はその言葉に既視感を覚える。 「……まだ二十七ですよ、俺」 「うん、あの頃見た坂下くんと、全然変わらない……」  先輩はさっき見たばかりだけど、十年経ってますます綺麗になった。先輩が俺に近づく。 「ね。それで、今度は聞かせてくれる? 好きな人はいるの?」 「俺は……」  今度はちゃんと伝えよう。十年分とちょっとの気持ちが詰まった言葉を。 「俺、先輩が好きです」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加