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「……」
浮遊感がなくなる。目を開くと、辺りの白いもやがとれ、廊下が広がっていた。帰れた?
「それにしても、何だったんだろう……」
カツ、カツ。
音が、聞こえる。もしかして。
「……坂下くん?」
俺はその声に振り返る。
「保積、先輩……」
「坂下くん、老けたねえ……」
俺はその言葉に既視感を覚える。
「……まだ二十七ですよ、俺」
「うん、あの頃見た坂下くんと、全然変わらない……」
先輩はさっき見たばかりだけど、十年経ってますます綺麗になった。先輩が俺に近づく。
「ね。それで、今度は聞かせてくれる? 好きな人はいるの?」
「俺は……」
今度はちゃんと伝えよう。十年分とちょっとの気持ちが詰まった言葉を。
「俺、先輩が好きです」
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