十年後に会いましょう

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 旧校舎。よく先輩とここで話してたっけ。保積があんなこと言うから……。なんて、自分の心に言い訳してみる。本当は少し期待もしている。だって、今日は……。 「先輩……」  俺は校舎の中に入り、三階の廊下に向かった。 「けほけほ、さすがにちょっとほこりっぽい……」  階段を一段一段上がるごとに、俺はドキドキしていた。心なしか頬も熱い気がする。もしかしたら、本当に先輩に会えるんじゃないかって。 「はあ……疲れる……」  社会人になってから、運動なんかほとんどしなくなった。たまに妹に付き合わされてテニスコートを借りてテニスするくらいなもので。 「ふう……、やっと三階か」  たまにはいい運動だ。俺は階段を上がりきって廊下に出る。 「いない……。はは、そりゃそっか。十年経ってるんだもんな……」  少しがっかりしたが、さほど驚かなかった。十年前の約束なんて、未だに覚えてる俺の方がどうかしてるのかもしれない。  保積はああ言ってたけど、もしかしたら俺を元気付けるために言ってくれたのかも。 「はあ……」  窓を開けて頬杖をつく。そういえば昔はこうしてると、先輩がよく俺の頬を突っついてきてたっけ。  俺は十年前に思いを馳せる。 *****************************
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