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休み時間も終わりそうなので、先輩は教室に戻らないといけなくなった。
「坂下くん、そういえばどうやって帰るの?」
「え、あ、そういえば……」
何がどうしてこうなったのかわからないから何とも言えない。この時計使えば帰れるのだろうか?
「しょうがない、本当はこっちの坂下くんに渡すつもりだったんだけど」
そう言って先輩が取り出したのは時計。
「あ、それ!」
「え?」
俺は先輩からもらった時計を取り出した。
「あ、それ……」
「これ、先輩が遠くに行くからって俺にくれたものなんです。やっぱりこの時計の力だったんでしょうか?」
「……ああ、そっか。そういうことか……」
先輩は一人頷くとクスクス笑う。
「先輩?」
「あはは、ごめんごめん。うん、わかった。これとそれ交換しましょ?」
「え? で、でも……」
「いいのいいの。どうせそれ、今は使い物にならないし」
そう言うと先輩は俺の持っていた時計を無理やり奪いとり、自分の持っていた時計を俺に押し付けた。
「あの、先輩……?」
「坂下くん。十年後、また会いましょう」
「え?」
すると、時計が動き出し、辺り一面が真っ白になった。
「うわっ」
思わず目を閉じる。二回目だけど、この浮遊感は慣れない。
「坂下くん。十年後、楽しみにしてるわ」
最後にそんな先輩の声が聞こえた気がした。
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