6.僕だけのアイドルに

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 すっかり気をよくした母親は並んで座る遥斗とイェジュンを楽し気に揶揄った。 「それにしても、遥斗さんはイェジュンと仲がいいのね。二人は息ぴったりだったもの」  二人はそこですっかり気まずくなってしまった。まだちゃんと和解した訳でもないのに、息がぴったりだと言われても……。  しかし、母親は二人の間の微妙な空気感などお構いなしに豪快に笑い、遥斗の前に腰を下ろした。 「遥斗さんはイェジュンと同じグループでデビューするんでしょう?」 「はい。その予定です」 「じゃあ、イェジュンをよろしくね。この子、不器用であなたにご迷惑をおかけすることもあると思うけど、必死で歌手になることを夢見て努力してきた子だから」 「母さん、余計なこと言わなくていいって」  慌てて止めようとするイェジュンを無視して、母親は続けた。 「イェジュンが歌手になろうと決めたきっかけの一つが私を元気付けるためだったのよ。普段はぶっきらぼうだし愛想もない子だけど、本当は優しい子なの」 「お母さんのために歌手を?」 「そうだよ。俺、親父を中学時代に亡くしてるんだ」  イェジュンの口から告げられた衝撃の真実に遥斗は言葉を失った。
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