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だが、遥斗は母親の言葉を素直に受け入れることができなかった。遥斗がイェジュンを幸せにできるなんてとても思えなかったからだ。
遥斗は持っていた箸をギュッと固く握り締めた。
「……無理だよ、そんなの。僕なんかがヒョンアを幸せにできる訳ない……」
遥斗のふと漏らした言葉に、イェジュンの顔にも陰が落ちた。
「俺こそ、自分が幸せになるために遥斗を利用するなんてできない」
「僕にそんな利用価値がある訳ないじゃないか。僕はヒョンアに八つ当たりしたんだ。自分の恋心が叶わないからって、自暴自棄になって、ヒョンアを傷付けた。ヒョンアは僕のことを心配してくれていたのに」
遥斗の口からポロリと本音が零れ落ちる。すると、イェジュンが遥斗の方に身を乗り出してきた。
「そんな訳あるか! あれは全部俺が悪かったんだ。俺はレコーディングの後、お前が泣いていたのに、その理由がわからなかった。お前のことを誰よりも大切に思っているはずなのに、逆にお前を怒らせてしまった。俺はその理由が今になってもわからないんだ。本当にそんな自分が情けない」
飽くまでも自分が悪いと主張するイェジュンに負けじと、遥斗も意地になって自分の落ち度を主張する。
「ヒョンアは情けなくなんかいないよ! 僕はヒョンアのことが好きなんだ。だけど、ヒョンアが僕のことを好きになってくれる訳がない。だから、レコーディングの日、ヒョンアに僕と付き合ってもいいって言われた時、そのセリフが冗談なのがつらかった。でも、結局同性のヒョンアに叶わない恋をした僕が全部悪いんだ。ごめんなさい」
「俺は冗談なんか言ってないぞ。俺は本気でお前のことが好きで、ブライアン先生にお似合いだと言われたから、遥斗と恋人になりたいと自分の希望を述べたまでだ。だが、そのせいでお前をそんなに傷付けていたんだな。本当に申し訳ない」
「僕と恋人になりたいって……え?」
「うん?」
そこまで押し問答を続けたところで、遥斗とイェジュンははっとして顔を見合わせた。
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