6.僕だけのアイドルに

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「ヒョンア、今僕のことが好きって言った?」 「遥斗こそ、俺のことが好きって言ったよな?」  そのまましばしの沈黙が二人の間に流れた。遥斗は、そして恐らくイェジュンもまた、二人が共に口にした「好き」という言葉を落とし込むのに時間を要したのだった。 「遥斗、俺のことが好き、なのか?」  イェジュンが恐る恐る尋ねた。遥斗も今現実に起きていることが信じられず、(ゆめ)(うつつ)のまま己の恋心を吐露した。 「うん。好き。Pegasusの仲間として、じゃなくて、恋愛の好きとして」  イェジュンの顔がポッと薔薇色に染まった。イェジュンのような一点の曇りもない美形の男が見せるその顔は、思わず見惚れてしまいそうな程綺麗で色気を豊潤に纏っていた。  イェジュンは顔を上気させたまま、敢えて自分を落ち着かせるように手を胸の上に起きながら遥斗を問い質した。 「嘘、じゃないよな?」  遥斗はイェジュンに自分の想いを信用して貰おうと必死に訴えた。 「嘘じゃない。僕はヒョンアのことが好き。だからこそ、一緒にステージで歌いたいと思った。大好きなヒョンアとデビューしたいんだよ!」  遥斗の訴えを聞いていたイェジュンの透き通るような瞳の奥に、滾る炎のような熱情がこもるのがわかった。イェジュンは遥斗の肩を両手で掴み、熱っぽく捲し立てた。 「俺も遥斗が好きだ。可愛い顔しているところとか、ちょっと泣き虫なところとか、普段は突っ張っているのにふとした瞬間に甘えん坊になるところとか、音楽に真摯で一生懸命なところとか、どんな逆境にも負けないところとか。何より、俺はお前の歌声が大好きなんだ。お前の歌声を俺だけのものにしてしまいたいくらいに」  遥斗の顔も桃色に染め上がる。これだけイェジュンの口から自分を好きな理由を連ねられると、嬉しいというより恥ずかしい。それに、自分がイェジュンを想う気持ちの方がもっと大きいんだと張り合いたくなる。  遥斗も熱っぽくイェジュンに訴えた。 「僕も、僕も、こんな人いるんだって驚くくらいイケメンなところとか、普段はぶっきらぼうだけど本当は優しいところとか、僕を誰よりも理解してくれているところとか、ヒョンアの全部が好き! でも、一番好きなのは、ヒョンアの歌って踊っている姿だよ。ヒョンアを僕だけのアイドルにしてしまいたいくらい、大好き」  イェジュンはギュッと遥斗を抱き寄せた。
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