6.僕だけのアイドルに

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「お前にキスしてもいいか?」  イェジュンの声が甘美な音色のように耳元で囁く。  まだ誰とも恋人関係を結んだことのない遥斗にとって、「キス」という響きだけで身体がゾクリと震える程の威力があった。  遥斗は少し逡巡したが、イェジュンの優しくも熱い視線に、思わず「うん」と頷いていた。  遥斗の唇に柔らかい感覚が当たる。このふわふわで溶けてしまいそうに柔らかいものがイェジュンの唇だ。愛しいイェジュンの可憐な唇だ。  手の届かないアイドルであったイェジュンは今、手の届く場所で遥斗だけのアイドルでいてくれている。そして、イェジュンもまた遥斗を同じように見てくれている。  何という奇跡だろう。  そう思うと遥斗もたまらずにイェジュンの唇を吸い上げる。それに呼応するようにイェジュンの接吻も激しさを増す。  イェジュンと唇を食み合っていると、遥斗の口の中にぬるりと濡れそぼった熱い塊が入ってきた。 ――もしかして、これがヒョンアの舌!?  イェジュンに舌を入れられていることがわかると、生まれて初めて味わうその甘い快感に身体がゾクリと反応する。柔らかくも確かな大きさをもつイェジュンの舌が遥斗の口内を蹂躙する。  遥斗も溢れる快感と恋情に突き動かされるまま、夢中になってイェジュンの舌に自らの舌を絡ませる。  淫靡な水音がその場に響き渡り、官能的な気分を駆り立てた。 584162c4-c403-4903-89a9-8c389eb8813d  もっともっとイェジュンと触れ合う感覚を心ゆくまで味わいたい。遥斗ははやる気持ちのままイェジュンと手を取り合い、階段を駆け上がってイェジュンの部屋の中になだれ込んだ。  そして、二人だけの空間で深く唇を重ね、舌を絡ませ、互いへの愛を分かち合い続けた。
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