7.夢を叶えてくれてありがとう

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7.夢を叶えてくれてありがとう

 二日間の休暇が終わるまでに仲直りを果たした(はる)()とイェジュンは、無事Pegasus(ペガサス)のメンバーからの脱落を免れた。  遥斗はソウルに戻ってから、チャンヒョクの前でもイェジュンを「ヒョンア」呼びしていたことに気が付いた。  遥斗は改めて自分の口の軽さを後悔した。  しかし、チャンヒョクの語るところによると、遥斗が口を滑らせる前に、イェジュンはチャンヒョクに何度も「遥斗は甘えて俺をと呼ぶんだ。可愛いだろう?」と自慢していたらしい。  あまりにもわかりやすいイェジュンの惚気っぷりに、聞いている遥斗の方が恥ずかしくなってしまうのだった。  そのイェジュンの遥斗へのぞっこんぶりは、ブライアンにも筒抜けであったようだ。  何でもレコーディングの日に飛び出した「恋人のようだ」という発言は、二人の背中を押す一手のつもりであったらしい。  プロデューサーから恋人関係であることにお墨付きを貰ったのはありがたいが、それがきっかけで大喧嘩に発展したことを思うと何とも複雑だ。  チームPegasus全員からお墨付きをもらった遥斗とイェジュンの恋仲だが、二人を待っていたのは、甘い恋人同士の時間などではなく、デビューに向けた怒涛のスケジュールだった。  そう。とうとう遥斗たちのデビューが決まったのだ。ブライアンによれば、デビュー時期は二月末を予定しているという。ギリギリセーフで、遥斗は父親に課された条件をクリアしたのだった。  これからデビューティーザーや各メンバーの紹介動画、デビューアルバムのタイトル曲Supreme(スプリーム) Wing(ウィング)のミュージックビデオなど各種コンテンツ撮影が日々控えていた。  また、デビューショーケースや多数出演する予定の音楽番組に向けて、ダンスやボーカルのレッスンは厳しさを増した。  ライブを想定し、ヘッドセットをつけて本番さながらに歌って踊る。その様子を撮影し、細かいミスも念入りにチェックしては修正を加えていく。 「君たち二人は恋煩いで練習を休むくらい余裕のようだから、全て完璧だよね」  ブライアンが笑顔で遥斗とイェジュンにプレッシャーをかけてきた。  しかし、二人の恋愛沙汰でPegasusのチーム全体を振り回したのは事実であるし、今回の騒動の最大の戦犯であることは否定のしようがない。遥斗もイェジュンも完璧なパフォーマンスをして挽回せねばならなかった。
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