7.夢を叶えてくれてありがとう

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 しかし、遥斗たちは浮かれてばかりもいられなかった。パフォーマンスをファンの前で初めて披露するデビューショーケースは着実に近づいていたからだ。  世間が寄せる期待が高いからこそ、失敗は決して許されない。ダンスも歌も百パーセント以上のものを出し切らなければ、上々の滑り出しを見せたグループの勢いにも水を差しかねないのだ。 「本番でトチッたら首ね」  笑顔でサラリとプレッシャーを掛けてくるブライアンの一言に、Pegasusのメンバーたちの表情も引き締まる。手足の角度までぴったりと合うように何度もダンス練習を繰り返した。  だが、何度繰り返しても一度の本番でミスをすれば全てが水の泡になる。遥斗の顔にも、次第に不安の陰が落ちるようになっていった。  ネットに溢れるPegasusに対する反響の大きさも、最初こそワクワクして心躍らせていたのだが、次第にプレッシャーとなって精神を削っていった。  いつしか、遥斗はファンのコメントを読むことすら、怖くなってやめてしまった。  募る不安のためか、ここ最近は本番のステージで、ダンスの振りも歌詞も忘れ、頭の中が真っ白になって立ち尽くしている悪夢を見ては、夜中にうなされるようになっていた。
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