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眩い光に包まれながら、四人は何百回、いや何千回と練習を重ねたダンスを万感の想いを胸に踊り始める。
――気持ちがいいな。
遥斗は踊りながら思った。
スタジアムの奥までぎっしりと埋まったファンは、ペンライトを振ってステージで踊る四人を応援している。それはまるで光の海のようだった。
イェジュンの第一声が会場の隅々まで響き渡る。ハスキーで色気たっぷりなイェジュンの美声が、観客たちのどよめきを引き起こす。
――聴け、僕の恋人の渾身の歌を!
遥斗は激しく踊りながらも、大好きなイェジュンの歌声に聴き惚れた。
だが、気を抜いてはいられない。次が遥斗のパートだ。イェジュンと一緒にステージで歌いたい。その夢が叶う瞬間だ。
遥斗は思い切り息を吸い込み、そのハイトーンボイスを三万人の観客に向かって解き放った。
「わぁ!」という歓声が沸き起こる。
最高に気持ちが良かった。この巨大な空間の中で、今、遥斗の歌声だけが場を支配している。興奮と快感に全身が痺れる。
メンバーたちは遥斗とイェジュンに続き、それぞれのスキルを惜しげもなく披露した。ヨハンがダンスブレイクを炸裂させ、チャンヒョクが巧みなラップでファンを盛り上げる。曲はラスサビに向けてボルテージを最高潮に高めていく。
転調し、より高くなったキーでイェジュンがラスサビをシャウトする。合わせて遥斗がフェイクを叫び、二人の高らかな歌声が会場を揺らせた。
ファンたちも総立ちで遥斗とイェジュンの歌声に酔い知れている。最後の音が消えるのと同時に、大地を揺るがせるような大歓声が四人へと降り注いだのだった。
デビューショーケースは順調に進行した。イェジュンは最後まで完璧なアイドルだった。爽やかな笑顔をファンたちに振り撒き、トークでのファンサービスも新人アイドルとは思えない程完璧だった。
おまけに相変わらず一点の曇りもない端正な顔立ちが目を捉えて離さない。自分もアイドルとしてステージに立っている癖に、遥斗自身がただのファンになって魅入ってしまいそうだった。
最後に日本のファンに向けて日本語でのコメントを求められ、遥斗は海の向こうで見ているであろう友人や大勢のファンに感謝の意を述べ、手を振った。
充実したデビューショーケースは、アルバムに収録されているカップリング曲から一曲を披露して終わった。遥斗はもっと歌いたいという名残惜しさを残しながら、ステージを後にした。
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