最後の風

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 その日は、ゼミだけのために大学へと向かった。就活やら卒論やらで教室の空気は最近ピリついている。  私は、この時期になっても自分の夢だとかそういうものを見つけられなかった。  小さい頃は、自分はいつかは夢を持って、夢を叶えるために努力する人間になると思っていた。  だけど、結局大人になった今も、私に夢などない。  小学生の頃、周りの子たちは大きな夢を抱えていた。サッカー選手やアイドル、お笑い芸人に漫画家。彼らの中にその夢を今も抱き続けている人はどれくらいいるのだろうか。  私は、そんな大きな夢を持ちたかった。自分の才能を見つけて、その夢に向かって突き進む。そんな人生に憧れていた。  けど、今の私は大学名を言っても首を傾げられるような、あまり有名ではない大学に通う、才能も美貌も何も持ってない女子大生だ。  授業中にそんな関係のないことを考えながら、私は一人で落ち込んでいた。  授業を終えると私は大学を出た。友人と別れ、駅の方へ向かう。この日の風は少し柔らかくて、肌を撫でるようにどこかへと飛んでいった。
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